エンタープライズアーキテクチャとは、組織の目標達成に向けて、そのビジネス戦略、プロセス、情報、テクノロジーを整合させる戦略的なフレームワークです。
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デジタル化をもってしても魔法のように統一できない唯一のものは、仕事の進め方に対する人それぞれの好みです。私たちは自分の必要とするやり方で(時には論理的に、時にはぞんざいに)、目の前にあるツールやリソースが何であれ、それらを利用して仕事を片付けています。そのような状態で、社内のほかの全員と同じ目標の達成に取り組んでいるのです。
現代的な企業でも伝統的な企業でも、同じように IT アーキテクトを採用することによって、破綻したプロセスを是正するとともに、慎重に選択したイノベーションに新たな戦略を結び付け、その戦略を強化しています。
そこで出番となるのがエンタープライズアーキテクチャハブです。このハブは、記事、ホワイトペーパー、ビデオなど、豊富な情報を提供するリソースを厳選してまとめた決定版ガイドです。
EA(エンタープライズアーキテクチャ)の初心者でも、熟練のプロでも、EA イニシアチブを円滑に進めるための貴重な洞察と実践的なアドバイスが得られるでしょう。
エンタープライズアーキテクチャとは、組織の目標達成に向けて、そのビジネス戦略、プロセス、情報、テクノロジーを整合させる戦略的なフレームワークです。組織を全体論的に捉えることで、効果的な意思決定、リソースの最適化、ビジネス環境の変化への適応を実現します。
EA は、以下のような基礎をなす複数の分野を組み合わせたものです。
ビジネスアーキテクチャ
IT アーキテクチャ
テクノロジーアーキテクチャ
セキュリティアーキテクチャ
全アーキテクチャ全体図(出典:itarch.info)
IT とビジネスの両領域を等しく対象とする専門分野である EA では、リソースを無駄なく共有して取り組みを合理化するために、部門やチームを横断して実用的な標準を導入します。
EA は、IT をイノベーションの推進力として、短期または長期のあらゆる変革プロジェクトのビジネスニーズを支援することを可能にします。
EA の目的は、組織の構造と業務の概要を示すフレームワークを確立することです。多くの場合はそのために、青写真となるビジネス機能マップを作成します。このフレームワークは、IT 資産やビジネスプロセスを含めて組織を包括的に捉えたものにします。
また EA では、チームや組織をまたいで環境を調和させることによってチーム間の連携と標準化を促進することも目指します。提供されるガイダンスは通常、組織固有のビジネス要件に基づいて策定されます。
📚 関連:エンタープライズアーキテクチャの価値
IT に詳しくない友人に EA のことを説明するとしたら、次のように伝えてみましょう。「EA とは、大きな組織の青写真のようなものです。組織を構成する人、タスク、ツール、情報といったさまざまな要素のすべてが、どのように組み合わさるのかを示します。EA は、組織が運営を円滑化して目標を達成するために役立ちます。組織の全員を導く地図のようなものであり、成功のために何をすべきで、すべての要素がどのように結び付いているのかを誰もが把握できるようにします」
EA の歴史は、1960 年代から 1970 年代にさかのぼります。組織は当時、拡大を続ける情報技術 (IT) インフラを管理するために体系的なアプローチが必要であることに気付き始めていました。
「エンタープライズアーキテクチャ」という用語は 1980 年代、ジョン・ザックマン (John Zachman) によって考案されました。1990 年代全体にわたって、EA の開発と導入の指針となるさまざまなフレームワークや方法論が登場しました。
2000 年代には、組織がビジネス戦略と IT 投資を整合させることの重要性を認識していき、それと同時に EA の導入が勢いを増しました。
現在も EA は、新たなテクノロジー、ビジネス上の課題、最適な効率性とアジリティを追求する組織の変化し続けるランドスケープに適応しながら、進化を続けています。
エンタープライズアーキテクチャチームはかつて、徹底的な 5 カ年計画を立てていましたが、それは、過剰な分析、進捗の遅さ、厳格な概念モデルが伴うものでした。
しかし、今日の IT 管理のベストプラクティスとしてアジャイルや DevOps が台頭したことで、そのような旧来の EA に対する考え方は廃れる方向へと追い込まれました。
エンタープライズアーキテクチャの 7 大ユースケース (英語)
EA のプラクティスが進化するに伴い、それを支援するツールも進化を遂げています。
EA に特化した専門ツールは拡張性が高く、複雑なモデリング、全社的なコラボレーション、有用な統合、優れた操作性を実現しながら、データの完全性と品質を向上させます。
EA は新たな役割を担うに当たって、デジタル時代の基準に合わせて EA 自体を再定義することを迫られました。かつては舞台裏で机上の研究として一定の成果を上げていた EA は、理論へのこだわりから脱却し、実務に即した形で以下のような具体的なメリットを企業にもたらすことを求められたのです。
アプリケーション合理化のユースケースによるコスト削減の可能性 (英語)
EA の主なメリットは以下のとおりです。
多様な情報源を把握、蓄積、構造化、分析することで、エンタープライズランドスケープにおける予期せぬ問題や予測可能な問題を解決できる。
業界関連のテクノロジーを認識し、特定のサービス提案が企業に与える影響を明確な言葉で論証できる。
アジャイル方法論の全社的導入を促進することで、プロダクトの展開を加速させ、サイロ化した部門同士をつなぐことができる。
投資と変革戦略の優先順位付けを目的として、組織の状態を明確に把握するための調査を実施し、データ主導の知見をビジネスリーダーに提供できる。
標準化されたプロセスの利用によって、組織をより良い方向へ変革できるだけでなく、変革そのものへの取り組み方も改善できる。
EA は正しく構築されれば、プロセス、効率性、意思決定の改善を通じて組織に価値をもたらします。しかし、それには課題もあるため、その採用は大きくは進んでいません。
着手点の分かりにくさ、導入面とガバナンス面のギャップ、継続的なイノベーションの必要性が、EA プログラムの成功を妨げる障害となっています。
EA の一般的な課題には、以下のようなものがあります。
ビジネス部門から十分な賛同を得られない。
リーダーシップとビジョンがない。
EA 業務向けツールを利用しない、または不適切なツールを使用する。
計画を詰めすぎ、行動が不足する。
何もかもをモデリングしようとする。
誤ったレベルで問題解決をする。
📚 関連:エンタープライズアーキテクチャの課題
先に述べたメリットを実現するために IT アーキテクチャが発展したため、現在主流となっている作業方法論(そのほとんどはコンソーシアム、政府、または著名なテクノロジー企業が開発したもの)が台頭し、今日の現代的な EA フレームワークの基礎を築くことになりました。
ArchiMate は、EA 専用に設計されたグラフィカルなモデリング言語でありフレームワークです。さまざまなアーキテクチャドメイン間の関係を、標準化された記法で記述、分析、可視化できます。
ザックマンの EA フレームワークは、企業組織のさまざまな側面を分析し、それらを整合させるために役立つ構造化されたアプローチです。
格子状の構造が用意されており、さまざまな視点を表す 6 つの行(プランナー、オーナー、デザイナー、ビルダー、サブコントラクター、ユーザー)と 6 つの列(対象範囲、ビジネスモデル、システムモデル、テクノロジーモデル、詳細表現、機能)で構成されています。
TOGAF は、コントロールされた複数のフェーズを利用して(アーキテクチャ開発手法 [ADM] と呼ばれる)、組織構造の設計、実装、管理、維持を行う手法です。その戦略は 25 年にわたり反復的に改善されてきました。
FEAF は、本来は米国政府による連邦機関の統合のために設計されたアーキテクチャフレームワークであり、民間企業でも EA モデルとして一般的に利用されるようになった協働型の計画方法論です。
IT 分野の調査とインサイトで世界を牽引するガートナー社は、そのコンサルティング業務において EA ソリューションのベストプラクティスの数々を長年にわたり提案することで、独自の方法論を構築するに至りました。このフレームワークは、抽象的なフェーズ分けよりもビジネス成果に重点を置いています。
EA の導入というタスクには敷居の高さを感じるかもしれませんが、いくつかのステップに分割すれば、そのプロセスはそれほど難しいものではありません。そこで、EA の導入に役立つ 6 つのステップを以下に示します。
📚 関連:EA サクセスキット
EA 導入の最初のステップは、組織が達成しようとしているビジネス上の目標と目的を定義することです。例としては、効率の改善、コスト削減、カスタマーエクスペリエンスの向上、規制要件の遵守などが挙げられます。
例えば、EA を構成する部分領域として以下のような領域を選択できます。
EA は、ビジネスリーダー、IT プロフェッショナル、エンドユーザーといったさまざまなステークホルダー間のコラボレーションを必要とします。EA イニシアチブに関与する主要な EA ステークホルダーを特定して、各ステークホルダーがプロジェクトの目標と目的を確実に理解できるようにします。
📚 関連:EA ステークホルダーからのよくある質問への答え方 (英語)
企業が最新のクラウド主導型ソリューションを導入する中、SAP LeanIXのような柔軟なエンタープライズアーキテクチャ管理 (EAM) ツールに対するニーズが高まっています。Excel、Visio、PowerPoint といった従来の計画ツールでは、デジタルビジネスモデルの要件を満たせなくなったのです。
アジャイルアプローチへの移行により、最新の EAM ツールは変革を推進し競争力を維持するために不可欠なものとなっています。IT ランドスケープをモジュール形式で可視化し、目標の達成を支援する EAM ツールを選択しましょう。
📚 関連:最新の EA ツールに求めるべきこと (英語)、2024 年ガートナー® マジッククアドラント™ EA ツール部門
組織の IT インフラと IT システムの現状を評価して、強みと弱みの領域を特定します。その一環として、包括的な IT 監査を実施し、組織のハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、セキュリティを評価する場合もあります。
📚 関連:ビジネス機能マップを定義するためのベストプラクティス
ビジネス目標と IT インフラおよび IT システムの現状評価に基づき、ターゲットアーキテクチャ(目標とするアーキテクチャ)を開発します。アーキテクチャの将来像は、ビジネス上の目標と目的に沿って、現状評価で特定された弱みに対処できるように設計すべきです。
現状のアーキテクチャから将来像への移行に必要な手順の概要を示す導入計画(変革ロードマップ)を策定します。この計画には、タイムライン、マイルストーン、リソース要件を盛り込みます。
📚 関連:EA ロードマップ
EA イニシアチブがスタートした後は、進捗を監視し、必要に応じて EA フレームワークを調整することが重要です。その一環として、導入計画に対する進捗を測定し、課題や障害を特定し、必要に応じて計画を調整してイニシアチブを軌道に乗せ続ける必要があります。
📚 関連:EA 成熟度の評価 (英語)
デジタル化時代が訪れ、組織の部門が増加したことによって、IT インフラでビジネス課題を解決する必要が生じてきました。だからこそ EA のベストプラクティスが、複雑な課題に対し、実証済みのコントロールされた方法でその土台から取り組むために役立ちます。マッキンゼー社は、ベストプラクティスとして以下を挙げています。
現代的な EA 管理と、組織におけるその基本的なユースケースは本質的に利用しやすいことから、専門のトレーニングセンターが人気を集めるようになりました。そうしたトレーニングセンターの多くは、クラウド変革、データコンプライアンス、リスク管理といった主要なトピックにおける EA の習熟度向上に寄与しています。
📚 関連:エンタープライズアーキテクト認定資格
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エンタープライズアーキテクチャとは
エンタープライズアーキテクチャについて分かりやすく説明するには
エンタープライズアーキテクチャのメリットとは何ですか?
エンタープライズアーキテクトの役割とは何ですか?
エンタープライズアーキテクチャのベストプラクティスとは何ですか?
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